vol.59
アメリカ~ブラジル~アフリカを自在に横断
グレッチェン・パーラト(アメリカ)&
リオーネル・ルエケ(ベニン)
正確なピッチと抜群のリズム感覚を持った歌声でジャジーR&B調やブラジル音楽も柔軟にこなすグレッチェン・パーラト(右)、西アフリカのベニン共和国出身でハービー・ハンコックやロバート・グラスパーとも共演を重ねてきたギタリストのリオーネル・ルエケ(左)。共にハイブリッド化する近年のジャズを代表する存在として活躍を続ける彼らですが、実はデビュー前に現代ジャズの精鋭の登竜門であるセロニアス・モンク・インスティテュートで学んでいた頃からの20年以上にわたる友人であり、初期のお互いの作品に参加し合っていた間柄。とはいえ、この10年ほどは共演する機会はなかったのですが、巡り巡って同じレーベルに在籍するようになったことで、ダブル・ネームによる初の本格的なコラボ作品『Lean In』が完成しました。
20年来のソウル・メイトと呼べる間柄だけに、音楽的な相性の良さは説明するまでもないところですが、お互いに新世代ジャズ、ブラジル音楽、アフリカ音楽などを自在に消化してきたサウンドを追求してきた両者の持ち味が、しっかりと溶け合った作品となっています。初期のお互いのリーダー作に収録されていたオリジナル曲を再訪したものから、グレッチェンの夫であるマーク・ジュリアナが切れ味の鋭いアフロビート・ドラミングで参加した楽曲に、バラフォンなどのアフリカの楽器を用いたものまで。また、マイケル・ジャクソンやアニタ・ベイカーの有名曲など、常にカバー曲選びと切り口のうまさに定評があるグレッチェンですが、今回は’80年代に大ヒットしたクライマックス「アイ・ミス・ユー」やフー・ファイターズの’97年作の収録曲などを絶妙に彼女ならではのものとしています。リオーネルのギターも、心地よいサンバ~ボサノバ調から親指ピアノを模したような独特のガット・ギター奏法にエフェクターを使ってシンセのような音を発するエレキまで。 あらゆる奏法を駆使してマジカルな名手ぶりを発揮していて、さすがの一言!
文/吉本秀純
『Lean In』
Gretchen Parlato
& Lionel Loueke
*CORE PORT/発売中 2,640円
※この記事は2023年7月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認下さい。